この連載は、ポケモン公式のAIコンペ「ポケカABC」の対戦環境を毎週ウォッチする定点観測レポートです。Kaggleで公開されるリーダーボード・対局データをプログラムで自動集計し、その数値をもとにAI(Claude)が記事を執筆しています。数値・順位はデータ取得時点のものです。
📖 コンペそのものの解説は「ポケモンカードのAIコンペが始まったので調べてみた」、AIがポケカをプレイする仕組みは「AIはどうやってポケモンカードをプレイするのか?」をどうぞ。
📌 注記: このレポートで分析しているデータは、ポケカABC(AI Battle Challenge)の公開エピソードをベースにしています。全対局ではなく上位帯を中心としたサブサンプルのため、「ポケカ全体の環境」ではなく「ポケカABC上位帯のメタ傾向」としてお読みください。日付・時刻はすべてUTC(世界標準時)です。日本時間はこれより9時間進んでいます。
目次
🏁 8月17日、最終提出が締め切られました
ポケカABCのシミュレーション部門が、8月17日の最終提出期限(Final Submission Deadline)を迎えました。参加者がAIエージェントを提出できるのはここまでです。
ただし、順位はまだ確定していません。 Kaggleのコンテストページに書かれている公式スケジュールはこうなっています。
| 日付(UTC) | できごと |
|---|---|
| 2026年6月16日 | コンテスト開始 |
| 2026年8月9日 | 参加登録の締切 |
| 2026年8月10日 | チーム合併の締切 |
| 2026年8月17日 | 最終提出の締切 |
| 2026年8月17日〜8月31日ごろ | 対戦を回し続ける期間。リーダーボードが収束した時点で確定 |
※各締切は原則としてその日の23時59分(UTC)です。
つまり、いま見えている順位は暫定です。提出は締め切られましたが、そこから約2週間、運営が対戦を回し続けます。それが落ち着いた時点ではじめて「最終順位」になります。
前回の特別編では「シミュレーション部門は8月17日まで」と書きましたが、正確には提出の締切で、対戦そのものはこのあとも続きます。お詫びして補足します。
なぜそんな期間が必要なのか。順位のほうのデータを見ると、その理由が一目でわかります。あとで詳しく見ていきましょう。
📊 締切直後のデッキ環境:王者マリィのオーロンゲexが消えた
対象期間:2026年8月10日〜8月17日(先週比)。8月17日のサンプルは4,501エピソード・のべ9,002デッキです。
この日のデータは、全参加者が最終版のエージェントに入れ替えたあとで回った対局にあたります。つまり「仕上がった構築だけで戦ったらどうなるか」の最初の姿です。
現在のTierランキング(使用率上位8デッキ)
| デッキ | 使用率 | 勝率 | 対戦数 |
|---|---|---|---|
| ドラパルトex | 38.25% | 0.5233 | 3,440 |
| メガガルーラex | 24.84% | 0.5128 | 2,221 |
| みどりのめんオーガポンex | 19.98% | 0.4807 | 1,791 |
| フーディン | 6.93% | 0.4711 | 622 |
| メガミミロップex | 3.65% | 0.4172 | 326 |
| 非ex / コントロール | 2.57% | 0.4978 | 231 |
| メガルカリオex | 1.76% | 0.5316 | 158 |
| カミッチュ | 0.74% | 0.4478 | 67 |
※上位8デッキまでの表です。このあと本文で触れるマリィのオーロンゲex(0.64%)やシロナのガブリアスex(0.47%)は、この下に続きます。
※「非ex / コントロール」は特定のデッキ名ではなく、集計プログラムが主役のポケモンを判定できなかったデッキの受け皿です。今週はこの枠が2.57%まで増えており、まだ分類できていない非exデッキが出てきている可能性があります。
💀 マリィのオーロンゲex:29.47%から0.64%へ
今週いちばんの衝撃はこれです。マリィのオーロンゲexの使用率が29.47%から0.64%へ、▲28.83ポイントの大暴落を記録しました。
この連載を追ってくれている方なら、この数字がどれだけ異常かわかると思います。7月第4週には使用率51%超と環境の過半数を占めていたデッキです。それが1か月足らずで、上位帯からほぼ姿を消しました。
勝率も0.4511から0.2069まで落ちています。ただし対戦数は58戦しかないので、この勝率自体はサンプルが少なく参考値です。それでも「使う人がいなくなった」という事実のほうが雄弁でしょう。
🐉 ドラパルトex:使用率4割目前
入れ替わりで環境の主役になったのがドラパルトexです。使用率9.08% → 38.25%(+29.17ポイント)と、1週間で4.2倍に増えました。3,440試合というサンプルの多さも十分です。
勝率は0.5778 → 0.5233と5.45ポイント下がっています。とはいえ5割を超えたままなので、「対策が進みはじめたが、まだ有利は保っている」という読み方ができます。前回のレポートで「使用率が増えると対策されて勝率が落ちる」という話をしましたが、ドラパルトexはその入り口に立ったところです。
🥊 メガガルーラex:使用率も勝率も伸びた唯一の上位デッキ
メガガルーラexは使用率7.65% → 24.84%(+17.19ポイント)と大きく伸ばし、さらに勝率も0.4886 → 0.5128へと2.42ポイント改善しました。上位デッキで使用率・勝率がそろって上がったのはこのデッキだけです。
一方のみどりのめんオーガポンexは使用率11.66% → 19.98%(+8.32ポイント)と伸びたものの、勝率は0.5565 → 0.4807へ7.58ポイント下落。使う人は増えたけれど勝てなくなった、という対照的な結果になりました。
📉 そのほかの動き
フーディンは19.62% → 6.93%(▲12.69ポイント)と後退。前回「1週間で使用率3倍」と紹介したデッキですが、今週は逆風でした。カミッチュ(4.34% → 0.74%)、メガルカリオex(3.98% → 1.76%)も使用率を落としています。
8月中旬に一時13.83%(8月14日)まで伸びていたメガユキメノコexは、8月15日の10.83%を最後に、最終日のデータからは姿を消しました。前回のレポートで新顔として触れたラティアスexは0.09%と、まだ埋もれたままです。
🏆 リーダーボード:Top20は全チームが最終版に入れ替えていた
8月17日時点の暫定トップ5はこちらです。
| 順位 | チーム | スコア | 前日の順位 |
|---|---|---|---|
| 1位 | Luca | 1319.9 | 1位 |
| 2位 | Аzat Akhtyamоv | 1260.4 | 12位 |
| 3位 | flg | 1258.4 | 3位 |
| 4位 | LumenLiquidity | 1244.3 | 4位 |
| 5位 | palsystem | 1243.0 | 19位 |
この表だけ見ると、1位のLucaは安定した王者に見えます。ところが2日前(8月15日)のLucaは1632位・スコア724.0でした。 そこから1日で1位(1299.2)まで駆け上がっています。
種明かしは提出のタイミングです。このTop20、全チームが8月16日に最終版を提出しています。 しかも上位5チームは、23時38分から23時57分までの20分間にそろって提出していました。
ただし全体で見ると、8月16日に提出したのは6,892チーム中1,696チーム(24.6%)です。最後に構築を詰め直したのは上位帯が中心で、6月の提出のまま止まっているチームも残っています。
1日で25%のチームが大きく動いた
上位陣が軒並み新しいエージェントに入れ替えた直後なので、スコアの動きが激しくなっています。8月16日から17日のたった1日で、6,889チーム中1,744チーム(25.3%)がスコアを20以上動かしました。
この「20」がどのくらいかというと、暫定3位のflg(1258.4)と4位のLumenLiquidity(1244.3)の差が14.1です。上位帯なら1〜2順位ぶんが吹き飛ぶ幅だと思ってください。
上位陣の動きも派手です。
- やる気元気ミワハルキ:26位 → 8位(スコア+110.4)
- palsystem:19位 → 5位(+105.0)
- Аzat Akhtyamоv:12位 → 2位(+93.8)
ちなみに「やる気元気ミワハルキ」は、特別編を書いた時点では首位に立っていたチームです。そこから8月16日に26位まで落ちて、翌日には8位まで戻ってきました。1日で25位落ちて、その翌日に18位戻る順位を「実力どおり」とは、さすがに言えません。
🤔 なぜ今の順位は「まだ決まっていない」のか
ここまでの数字を並べると、冒頭の疑問に答えが出ます。
このコンテストのスコアは、対戦を重ねるほど実力に近づいていくタイプの数値です(将棋やチェスのレーティングと同じ考え方)。逆に言えば、対戦数が少ないうちは、たまたま勝った・たまたま負けたの影響が大きく残ります。
いまはまさにその状態です。上位陣がそろって最終版へ入れ替えたのが8月16日の深夜。8月17日のリーダーボードはその約1日後の姿なので、どのエージェントもまだ1日ぶんしか戦っていません。Lucaが1632位から1位に跳ねたのも、ミワハルキが26位から8位に戻ったのも、実力が急変したというよりまだ数字が定まっていないと考えるほうが自然です。
だからKaggleは、提出を締め切ったあとも8月31日ごろまで対戦を回し続けます。公式の表現では「リーダーボードが収束するまで(until the leaderboard has reached convergence)」。この期間で順位が入れ替わることも、当然あります。
実際、シミュレーション部門のディスカッションには「締切後の評価対戦でスコア差が-NaNと表示される」というバグ報告も上がっていて、いま裏側で対戦が動き続けていることがうかがえます。
📌 今週の注目ポイント
提出が締め切られた最終週は、マリィのオーロンゲexの完全失速とドラパルトexの台頭という、環境がまるごと入れ替わる形で幕を閉じました。参加者たちが最後の数日で読み切ったのは「オーロンゲexはもう勝てない」という一点だったのかもしれません。
そして順位のほうは、これから2週間かけて本当の姿を現します。いま1位のLucaがそのまま逃げ切るのか、それとも収束の過程で入れ替わるのか。結果が確定するのは8月末ごろの見込みです。
確定したら、あらためて結果発表レポートをお届けします。もうひとつのストラテジー部門は9月14日まで続くので、この定点観測もまだ終わりません。
AIの大会を、AIと一緒に追いかける——引き続きお付き合いください!🎴