ポケモンカードのAIコンペが始まったので調べてみた

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2026年6月16日、ポケモン公式から突然こんな発表がありました。

「ポケモンカードゲーム AI Battle Challenge」を開始!

AIがポケモンカードをプレイする。しかも、世界中のAI開発者がつくったAI同士を戦わせて、最強を決める——。

私はAI研究者でも機械学習エンジニアでもありません。ただのポケモン好きです。
でも「AIがポケカをプレイする」と聞いたら、気にならないわけがないですよね。

この記事では、ポケカABCがどんな大会なのか、なぜポケモンカードが題材に選ばれたのか、そしてそもそもAIはカードゲームをプレイできるのかを、自分なりに調べてまとめました。

ポケカABCとは何か

正式名称は「ポケモンカードゲーム AI Battle Challenge」。英語では「Pokémon Trading Card Game AI Battle Challenge」で、略称が「ポケカABC」(英語略称:PTCGABC)です。

主催はKaggle(カグル)。データサイエンスの世界では有名なプラットフォームで、世界中のAI開発者やエンジニアが集まって腕を競う場所です。ポケモンの世界でいうところのポケモンリーグのような存在でしょうか。

そして共催が株式会社ポケモンHEROZ株式会社株式会社松尾研究所の3社。さらに開催協力としてGoogle、Google Cloud、NVIDIAという名前が並んでいます。

ここで「おっ」と思ったのがHEROZの名前。HEROZは将棋AI「Ponanza(ポナンザ)」を開発した会社です。2017年に当時の佐藤天彦名人に勝利して大きな話題になりました。

そしてHEROZはポケモンとの縁がかなり深い。過去には「ポケモンコマスター」を株式会社ポケモンと共同開発していますし、2024年にはポケモンのシングルバトル日本一決定戦「ポケモン竜王戦2024」で、「Pokémon Battle Scope」(ポケモンバトルスコープ)というAIを株式会社ポケモンと共同開発して公式配信に導入しています。

ポケモン竜王戦を見た人はピンとくるかもしれません。配信画面に「次の一手の予想」や「形勢評価値」がリアルタイムで表示されていたの、覚えていますか?あれがPokémon Battle Scopeです。将棋の中継で「AIの評価値」が表示されるのと同じ仕組みを、ポケモンバトルに持ち込んだもので、将棋ウォーズで培った技術が生かされています。

つまりHEROZは、将棋AIの会社であると同時に、すでにポケモン×AIの実績を持つ会社なんです。今回のポケカABCは、その延長線上にある取り組みとも言えます。

もう一つの共催である松尾研究所は、東京大学の松尾豊教授が技術顧問を務める会社で、日本のAI研究の中心的な存在です。松尾教授といえば、日本のAI研究の第一人者として知られています。

開催協力のGoogleNVIDIAについてです。GoogleはAlphaGoで囲碁AIの歴史を変えた会社で、AIコンペのプラットフォームであるKaggle自体もGoogleが運営しています。こちらは納得ですよね。

ではNVIDIAはなぜここに?Switchにチップを供給しているメーカーとしておなじみで、ポケモン(任天堂)関連株として株記事(【株】ポケモンポートフォリオ)で紹介していますが、今回の関わりはゲーム機ではなくAI開発の計算基盤としてでしょう。AIエージェントの学習には膨大な計算が必要で、それを支えるGPU(グラフィック処理装置)の世界最大手がNVIDIA。Kaggleの裏側で動いているGoogle CloudのサーバーにもNVIDIAのGPUが搭載されていますし、第二ラウンド出場者にはGoogle Cloudクーポン3,000ドル分が提供されます。要するにNVIDIAは「AIをつくるための道具」を提供する立場で参加しているわけです。ポケモンとの直接の接点というより、AI開発を裏側から支えるインフラ企業として名前が並んでいると考えると腑に落ちます。

ポケモン × 日本のトップAI研究者 × Google × NVIDIA——それぞれの役割を見ると、この大会がいかに本気かがわかります。

大会の仕組み

ポケカABCは2段階構成になっています。

第一ラウンド(2026年6月16日〜)

第一ラウンドには2つの部門があります。

シミュレーション部門は、開発したAIエージェントをKaggle上に提出して、他の参加者のAIと自動で対戦させる部門です。結果はリアルタイムでランキングに反映されます。ポケカの公式リーグのオンライン対戦をイメージするとわかりやすいかもしれません。ただし、プレイするのは人間ではなくAIです。期間は2026年8月17日8:59まで。

ストラテジー部門は、シミュレーション部門の結果に加えて、デッキの独創性やAI開発の工夫を評価する部門です。単に勝てばいいだけではなく、「どんな戦略で勝ったのか」も重要になります。こちらは2026年9月14日8:59まで。

ストラテジー部門の上位8チームには、それぞれ3万ドル(約480万円) の賞金と、第二ラウンドへの出場権が与えられます。

第二ラウンド(2026年末以降予定)

第一ラウンドを勝ち抜いた8チームによるトーナメント戦です。優勝チームには5万ドル(約800万円) の賞金。しかも、この対戦の模様はYouTubeで配信される予定です。

AIがポケカをしている様子をYouTubeで観戦できる。これはちょっとワクワクしませんか?

使えるカードは決まっている

一つ重要なのは、使えるカードが自由ではないこと。主催者が提供する指定リストのカードだけが使用可能です。

これはAI開発の公平性を保つためだと思われます。全カードを対象にすると膨大すぎますし、新カードが追加されるたびに環境が変わってしまいますからね。各プレイヤー(AI)の持ち時間は最大10分で、時間切れになったら負けというルールも設定されています。

なぜポケモンカードがAIの題材に?

将棋や囲碁のAIが有名なのは多くの人が知っていると思います。2016年にはGoogleのAlphaGoが囲碁のトップ棋士に勝利しましたし、将棋でも2017年にPonanzaが名人に勝ちました。

ただ、これらは「完全情報ゲーム」と呼ばれるものです。盤面の情報がすべて見えている状態で戦うゲームですね。

一方、ポケモンカードゲームは「不完全情報ゲーム」です。

相手の手札は見えません。山札の順番もわかりません。コイントスの結果も予測できません。つまり、すべての情報が見えている将棋や囲碁とは、根本的に違います。

松尾豊教授もコメントで「ポケモンカードゲームのように不完全情報の状況下かつ、多様なカード効果やランダマイズ要素が絡むゲームにAIを適用した事例は、世界的にもほとんど例がない」と述べています。

つまり、ポケモンカードはAIにとって新しい挑戦なんです。将棋や囲碁で証明されてきたAIの可能性を、さらに一歩先へ進める試金石として、ポケカが選ばれたということですね。

そもそもAIはカードゲームをプレイできるの?

これまでのAI研究では、ポーカーのAIが有名です。ポーカーもポケカと同じく「不完全情報ゲーム」で、相手の手札が見えない状態で戦います。

2017年には「Libratus」というAIがポーカーのプロに勝利し、2019年には「Pluribus」が6人対戦のポーカーで人間を上回りました。

ただ、ポーカーは使うカードが52枚と限られています。ポケモンカードは数千種類のカードがあり、60枚のデッキ構築からして膨大な選択肢があります。タイプ相性、進化、特性、ワザのエネルギーコスト……と考えるべき要素がケタ違いに多い。

AIエージェントがどこまでやれるのか、楽しみです。

参加条件

個人またはチーム(最大5名)で参加可能で、参加費は無料です。Kaggleアカウントがあれば誰でも参加できます。

もちろん、AIを開発できる技術力が必要ですし、Kaggleの規約を遵守する必要がありますので単なるポケカ好きがいきなり参加するのはハードルが高いです。でも、リーダーボードを眺めたり、YouTubeでの第二ラウンドの配信を観戦したりと、楽しみ方はいろいろありそうです。

まとめ:ポケモン好きとして、このコンペを追いかけていく

正直なところ、AIの技術的な話はまだよくわかっていません。でも、ポケモン好きとしてこの大会は注目していたいなと思います。

「サイド落ちをどう判断するのか?」「エネルギーの貼り方をどう決めるのか?」——こういう、ポケカプレイヤーなら日常的に考えていることを、AIがどう処理するのか。

ちなみに、デッキ構築はAIに行わせる必要はありません。ポケモンカードのドメイン知識とAI開発の手腕が融合する様子が楽しみです。

次回は「AIはどうやってポケモンカードをプレイするのか?」をもう少し掘り下げて調べてみます。

参考リンク

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